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課題テーマに挑戦「鳥海山」第15回

2017年10月08日

 課題テーマに挑戦「鳥海山」第15回

今日のつくば市は快晴です。昨夜は、隣の土浦市の花火大会がありました。私も、近くの路上で大輪の花火を楽しみました。昔、土浦に住んでいました時は、すぐ近くまで行き真上を見上げながら、その美しさを楽しんだものでした。花火の打ち上げの度に、お腹にドスンドスンと響きました。凄い迫力でした。

今回も「鳥海山物語」を始めたいと思います。総一郎と由美子の恋を成就させるか、或いは悲恋に終わらせるか悩んでおります。私の両親は大正生まれで、既に他界しておりますが、結婚式の当日までお互いの顔を知らなかったそうです。戦時中ですから、戦争に行ったままの息子の結婚の相手を親が勝手に決めたようです。この時代は、特に希ではなかったようです。

結婚式まで知らなかった私の両親は80過ぎまで苦楽を共にしました。現在の若い人たちは「恋愛結婚」で自分で決めた相手なのに、離婚する若い方が多いのは経済的な要素が大きいかも知れませんが、少しお互いに我慢が足りないところもあるのではないでしょうか?

また、話が逸れました。さっそくは始めます。

 鳥海山物語

第3章(2回目) 昭和49年1月

父からの竹内さんの会社への転職を半ば懇願された総一郎に、もう3年前にもなる「赤いリボンを付けた由美子」との御嶽神社のあの日の記憶が鮮明に蘇ってきました。

母に赤い可愛いリボンを髪に結んで貰ったという由美子の顔は、若さが溢れとても眩しく総一郎には映りました。瞳は輝き、総一郎の少し赤みを帯びた頬を遠慮なくまじまじと平気で見つめています。その表情から、総一郎への信頼、いやすべてを総一郎に託すという由美子の強い決意が読み取れました。

「私、もう怖くない。じぶんに正直に生きたい。」

それは笑顔で馳せられたものでありましたが、その愛おしさに由美子を抱きしめたい衝動に再び総一郎は襲われました。ですが閑散とした神社ではあっても世間の目があり、自重せざるを得ませんでした。

「由美ちゃん、今日は随分と明るいね。赤いリボンが素敵だよ!由美ちゃんは笑顔方が可愛いよ。」

この御嶽神社で由美子は何度泣いたろう。今の由美子はすっかり明るく変わり、澄んだ心が手に取るように総一郎に映りました。この由美子を必ず守り通さなければならないと総一郎は決意を新たにしたのでした。

「総一郎さん、もう私泣かない。これからは、総一郎さんに絶対涙を見せない!」

もし、総一郎がもう一度東京で暮らそうと言ってくれたら、今度は断ることはしないと由美子は覚悟を決めていました。だが、この日の総一郎の口からは、その話は出ませんでした。二人は、手をつないで境内を歩き、途中椅子に腰かけ幸せなひと時を過ごしました。時間はあっという間に過ぎ、もう暮れの夕やみが迫って来ていています。

また、5月の連休に会う約束をして別れました。別れ際、由美子が不意に総一郎の胸に飛び込ん出来ました。

「私、嬉しい。早く5月になればいいのに!」総一郎の胸の中で、由美子は甘えるように言いました。総一郎は優しく肩を抱きながら、由美子の甘い髪の匂いに心が躍りました。

もう今年は由美子も総一郎も23歳になります。女の由美子は、既に適齢期となり、由美子の数少ない伯父や叔母から、見合いの話が舞い込んで来ているようで、母のふみ子が、「まだその気がないようで、私も困っている。だが、嫁に行かれると私も寂しいし、まあ、そう急がなくとも。」と適当にあしらってくれていると去年の夏休みに逢った時に聞いていました。

離れの八畳間で寝ころびながら、両親に由美子のことを話さなければと思いながら、総一郎はこれからのことを思うと少し気が滅入ったのは事実ですが、だが由美子との幸せを思い浮かべると決心は少しも揺るぐことはありませんでした。

明日は東京に帰る日と決めており、その前に両親に由美子との結婚について話そうと総一郎は覚悟しました。                                 つづく

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