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課題テーマに挑戦「鳥海山」第20回

2017年11月04日

 課題テーマに挑戦「鳥海山」第20回

3連休の合間、私はこうしてパソコンに向かっています。早くこの「鳥海山物語」を書き終え、そして作詞に取り掛かりたいと思っています。中学生の頃だったか、「野菊の墓」という伊藤左千夫の小説を読んで涙したことがあります。その後、映画を何度も見ました。この「鳥海山物語」を書いていて、ふと思い出しました。

さあ、さっそく「鳥海山物語」に入ると致します。

 鳥海山物語

第4章(3回目)  昭和50年12月~51年3月

総一郎が仁賀保の大きな会社の社長の家に婿養子に入るという噂を、由美子が聞いたのは8月の頃でした。でも、その3か月前の5月には総一郎と御嶽神社の境内で逢っていたのです。何があっても一緒になろうね、お互い信じ合おうねと手を強く握りながら話した総一郎から、強い男の信念と揺るぎない愛を間違いなく感じた由美子でした。

ですので、その噂を聞いても少しも不安はありませんでした。ただ、総一郎への感謝と健康を気遣う手紙を何度も送りました。しかし、総一郎からの手紙は去年の8月に嬉し涙を流させたあの後は、一度も送られて来ることはなかったのでした。

いつもなら、師走に入ると間もなく、必ず御嶽神社で何日に逢おうねとの連絡が入るはずでした。今日はクリスマスです。鳥海山を一番美しく望めるこの田舎町でも、クリスマスイブにケーキを食べるという習慣はあまり遠くない時期からですが根付いていました。仕事を終えた由美子は予約しておいたお店で小さめのケーキを受け取り、家路を急ぎながらふと思いました。

(総一郎さんと、二人だけのクリスマスイブを迎えられるのは、いつになるのだろう?そんな日が本当に来るのだろうか?)

師走には、総一郎からの連絡は結局ありませんでした。由美子は、とても悲しい元旦を迎えました。総一郎を信じていないのではなく、何か事情があるのだろうとは思いながら、ただ逢えないということが無性に悲しくてならないのでした。

正月もあっという間に過ぎて2月になったある夜、由美子の家に叔母の千代子が自転車でやってきました。

前にもお見合いの話を持ってきた叔母の千代子は、今度もお見合いの話を持って来たのでした。

「由美子、由美子は今年で幾つになるんだ?25にもなるんだろ?女はいつまでも若くはいられない。それに、子供を産むのも、遅くなってからでは体に悪い。そろそろ嫁に行かないか?」

どうやらその見合いの話しというのは、見合いの相手の母親が病気がちで面倒をみていた姉が嫁いでしまい、長男に早く嫁を欲しがっているようでした。ただ家柄は悪くはなく、田畑もこの辺の平均な農家より多くを所有しているとのことでした。

「美代子、お見合いの話しは有り難いが、相手の母親の面倒を見るために由美子を嫁に欲しいと言うんじゃ、由美子が可愛そうだ。それに、由美子は野良仕事なんかしたこともない。千代子、この話はもし由美子が乗り気でも私は反対だ!」

母のふみ子は、由美子の気持ちを代弁してくれました。相手の親の面倒を見るのが嫌とかそういう話ではなく、そもそも由美子には総一郎以外は考えられないことでした。

母のふみ子が叔母の見合い話を断ってくれて、その話は終わりました。しかし、梅の木につぼみが膨らみ始めた頃、今度は伯父が見合いの話を持って来ました。

驚いたことに、母のふみ子は由美子へのその見合い話に大乗り気なのでした。

由美子は、自分の気持ちを分かってくれていると信じていた母のふみ子の豹変ぶりに、ただただ驚きました。                                つづく

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