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課題テーマに挑戦「鳥海山」第26回

2017年12月09日

 課題テーマに挑戦「鳥海山」第27回

今朝から、「鳥海山物語」の26回目と27回目を書いています。後から読んだら脈絡や整合性に問題が見つかるかも知れません。皆さんも何か気付かれましたらお問い合わせコーナーからご指摘くださいませ。この物語は、ブログカテゴリー「創作の小部屋」に作詞が完成した後移し替える予定ですので、その時に再度修正する予定でおります。

それでは、前回からの続きに入りたいと思います。(そういえば、朝食がまだでした。お腹が急になりました。)

 「鳥海山物語」

 第5章(第4回目) 昭和51年6月半ば

何と賢明で、そして思いやりにあふれた人だと由美子の目頭も熱くなり、信彦の顔がぼやけて見えました。

信彦に感謝しながらも、由美子は考えていました。3ヶ月の時があれば、総一郎と会い二人の誓いを大人たちに宣言することは、十分可能だと。

由美子は充分な自信と総一郎への厚い信頼を胸に、信彦の提案を了承しました。

それから数日後の夜、信彦が叔父と一緒に由美子の家にやって来ました。信彦は家には上がらずに、由美子の母にこう話しました。

「二人で相談したのですが、今後3ヶ月間、由美子さんとお付き合いをさせて頂いて、本当に二人とも幸せになれるかを考えたいと思っています。なので、結納とか挙式のことは、3ヶ月が過ぎてから、本当に二人が結婚したいと思った時から準備したいと思っています。もし、二人が一緒になってもお互いのためにならないと判断した時は、白紙に戻したいと考えています。これは二人で決めたことですので、よろしくお願いします。」

それだけを言うと、信彦と叔父は帰って行きました。母も、結婚してから相性が悪く由美子が不幸になるより、確かにその通りだと感服した様子でした。

由美子の母に述べた言葉を今度は、信彦は自分の両親にも告げましたが、同じように賛成こそすれ、反対はありませんでした。

由美子は決心しました。数え切れないほどの手紙を送ったにも関わらず、総一郎からは梨の礫です。3ヶ月という期限は決して長くはなく、由美子も本腰を入れなければと自分に言い聞かせました。

由美子は普段可愛がってもらっている専務さんに休暇を2日貰い、日曜日から火曜日までの3連休を作り、東京の総一郎のアパートを訪ねることにしました。母には、山形にいる中学の時の友達の家に遊びに行くと嘘をつきました。悲しい嘘ですが、今は何より総一郎の心を確認することが、二人の人生に幸福をもたらすのであり、小さなことに拘っている状況ではないと由美子は強い気持ちで東京に向いました。

初めての東京です。前もって買っておいた東京までの電車の路線を調べるための小冊子と、また都内の地図を麻のバックに詰め込みました。また、総一郎からの手紙は、大切に胸のポケットにしまいました。この手紙の裏に書いてある住所こそ、総一郎に会えるための唯一の手掛かりです。

郵便局から十分と思われうる金額を引き出し、手さげバックに入れました。

東京には明日の午後2時頃の到着を考え、羽後岩谷駅を午後1時過ぎの電車に飛び乗りました。

路線図と時刻表を眺めながら、何度も電車を乗り継ぐたびにこれで良いのかと不安でしたが、少しずつ総一郎に近づいているという思いが、不安を忘れさせました。

東京の大森駅に着いたのは午後の3時を回っていましたが、さっそく大田区の地図を広げ、中央3丁目を探しました。バスもありましたが、地図では20分も歩けばつく筈でした。

バス通りから、少し裏通りに入ると、狭い路地にくっつくように家が、そしてアパートが密集しています。総一郎のアパートの近くまで来ると、もう夕方になっていました。初めての都会での心細さで、由美子は藁にもすがる思いで、出会う人に誰彼かまわず声を掛け、アパート名を訪ね歩きました。

もう既に10人目位かと思うころ、高齢の女性に声を掛けると丁寧にもアパートまで案内してくれました。アパートは、木造モルタル作りの小さなアパートでした。

玄関に入ると、住人用の郵便受けがあり、「佐々木総一郎」の名前は確かにありました。思わず安堵のため息をし、総一郎の部屋を探しました。1階にはなく、2階に上がってみると総一郎の名札が掛かった部屋が確かにありました。ノックをしても留守の様でした。生憎日曜日のため、住人は誰一人いないようでした。由美子は、ますます心細くなりましたが、暫く待つことにしました。

どのくらい時間が経ったのか、総一郎の部屋の前でついウトウトしてしまった由美子でした。ふと人の気配で目が覚めました。すぐそこに中年の女性が立っていました。

「すみません。この部屋の佐々木さんをご存知でしょうか?」

由美子の問いかけに、怪訝そうな顔つきで、「佐々木さんは去年の夏ごろから、姿が見えないよ。どうしたのかね?」とそっけなく答え、隣の自室に入ってしましました。

すっかり途方に暮れた由美子は、仕方なくまた大森駅の方に引き返し、一晩泊めてもらうための宿を探すことにしましたが、宿の探し方も分かりません。由美子は、交番に入り警察官に事情を話し泊まるところを探してもらいました。まだ若く優しい警察官は、女性の一人客ということも付け加えてくれたので、由美子は安心して地図を書いても貰った宿に着くことが出来ました。

宿の女将が運んできたお茶を啜りながら、どうしたら良いものか悲観に暮れる由美子でした。つづく

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