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創作の小部屋第6回「不細工な顔」

2018年05月24日

 創作の小部屋第6回「不細工な顔」

本日は、短いお話を用意いたしました。思春期には、多かれ少なかれ多くの人が、何らかのコンプレックスを持った経験があるのではないでしょうか?この私も、容姿のことが気になり、秘かに悩んだ覚えがあります。

思春期のこのコンプレックスも、いつか大人になり、世間の荒波に揉まれているうちに忘れてしまうような気がします。ですが、悩みの真っただ中にいる当人にとっては、そんな気長には待てない重大な問題です。もし、顔のことで悩んでいる思春期の女の人がいたらと、この小話を作りました。

不細工な顔

私の横には、まだ生後1歳3ヶ月の彩花が眠っている。夫はとても優しく、私を、そして彩花を大切にしてくれる。

今、私は『幸せ』という言葉をかみしめている。幸せって本当にあるものなのですね!

あれは、私が中学3年生のときだった。学校から自転車での帰りに道、見知ら浮浪者風の男の人が、私を見てつぶやいた。

「不細工な顔やなあ。」

それは、決して私に向けられた悪意の言葉ではなかったが故に、私をもっと惨めにさせた。私は分かっている。確かに、私の顔は不細工だ。母親ゆずりの不細工さだ。

「もう、いや!」家に帰って、ベットに潜って泣いた。

「夕ご飯だよ~!」母の声が下の台所から聞こえてきたが、私は無視して、いやとても食べる気がしないまま、泣き続けた。

「どうしたの?ご飯食べないの?」しばらくしてから、母が部屋に入って来た。

私は、とても帰り道の出来事を話せるほど、まだ大人ではなかった。ただ泣いていた。母は、じっとしたまま動こうとはしなかった。

「私・・・そんなに不細工?」やっとそれだけを、私のために空腹に堪えている母にに向かって言った。

「ばか!なにが不細工や!誰がそんなこと言ったんじゃ?不細工の顔の人間なんて、この世に一人もおらん!」僅かの時間をおいて母は、大きな声で叫んだが、それから静かに話し出した。

「いいか、良く聞けよ。人間の顔はみんなそれぞれ違う。顔には、目があって、鼻があって口がある。歯並びの良し悪しもある。みんな同じ顔そしていたら、区別がつかんだろ?それに、それでは恋も愛もなくなってしまう。だから、それぞれ違っているだけだ。

おまえもやがて誰かを好きになり、それが恋となり愛となり、結婚するだろう。いいかい、顔とは、その人間のこころを表しているいるものなんだ。形や並べ方なんかじゃないんだ。おまえが、明るく素直な人間なら、それが顔だ。不細工な顔なんて、この世にはないんだ。」

母は、いつもの母ではなかった。不思議だった。いつもただ家族のためにひたすら生きているとばかり思っていた母が、こんなにも凛とした生き様を持っていようとは。

父も決して俗にいう”2枚目”とはかけ離れた顔立ちだった。そんな二人だが、争う姿を見たことは一度もなかった。母は、私の部屋から出て行こうとして、立ち止まって言った。

「私は、お父さんと一緒になれて本当に幸せだよ。お父さんも私も、決して美男美女とは程遠いかも知れない。でも私は、世界一の人と一緒になれた。お父さんだって口には出さないけれど、私やお前を大切にしてくれて、家族のために頑張ってくれている。いいかい、不細工な顔なんて、この世にはないんだよ。いつか、お前にも分かるときが来るよ。」

母は、そう言うと階段を降りて行った。それから、私は顔のことはあまり気にならなくなった。その後高校を卒業して小さな商事会社に就職し、主人と知り合い結婚したけれど、主人の容姿のことなど気にしたことはなかった。

今、私は彩花と午睡しながら、幸せを噛みしめている。もし、私をあの中学生の時のように、「不細工な顔」と面と向かって言う者がいたとしても、私は動じることはない。いや、不細工と言うのなら、その不細工に感謝したいと思う。

何故なら、もし私がなまじ世間で言う美しい顔つきだったなら、多分私はやはりうわべだけの端整なマスクの彼氏を追い求め、「〇〇ちゃんの彼氏より、もっといい男を探そう!」などと馬鹿なことを考えて、まだ独りでいたかも知れない。

不細工な顔なんてないんだ。それは母の言うとおりだった。私は、もしそんなことで悩んでいる人がいたなら、大きな声で言ってあげたい。

不細工?そんなことはどうだっていいじゃないの!そんなこと誰が決めるの?そんなこと、幸せにはどうでもいいことよ!

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