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創作の小部屋「独居老人のひとり言」第28回

2019年06月16日

  「独居老人のひとり言」第28回

上の画像は、フォト仲間のろごきっとさんの京都「城南宮の庭園」です。ろごきっとさんの画像は、とても構図が素晴らしく、そして美しいものばかりで私の憧れです。

させ「独居老人のひとり言」も第28回になります。あと数回で終了したいと考えています。皆さまには長い間お付き合い頂き誠にありがとうございます。

  「独居老人のひとり言」第28回

第27章 骨粗しょう症の予防対策

新緑の美しい季節となった。「なのはな会」も、今日で3回目だ。前回の第2回目は加藤さんが講師役の筈だったが、急に忙しくなってしまったとのことで、大川さんと交代したので今回は加藤さんが講師役である。第2回目もとても好評だった。

本日の第3回目の献立は、春の献立集第1週7日目と決まっている。加藤さんとYさんは今頃ス-パーに買い出しに行っていることだろう。私は少し早かったが公民館の予約時間の10時に着いて、公民館の調理室のイスに座り仲間の到着を待った。

携帯のネットで、引きこもり支援のNPO法人の情報などを見ていると、いつの間にか仲間がぞろぞろやって来て、和室でエプロン姿となった。初めの頃は男性陣のエプロン姿が不自然に感じられたが、今ではすっかり板に付いている。私も初めて緑色をしたエプロンを肩から下げた時は恥かしかった。女性の仲間から「可愛い!」などと言われて男どもは自信を持ったようだ。私も然りである。

しばらくして、加藤さんとYさんが買い出しから帰って来た。Yさんが車からクーラーボックスを取り出すのを見て、男の会員が駆け寄りキャスターを引いて調理室に運んだ。

今回も調理実習に入る前に、加藤さんから講話があった。

「皆さん、お早うございます。前回は急にバタバタと忙しくなってしまい、お休みをしてしまいました。申し訳ありませんでした。大川さん、有り難うございました」

深々とお詫びをする加藤さんに、改めてこの人の性格の良さを感じたのは多分私だけではないと思う。加藤さんは、続けて話し出した。

「前回は、高齢者の食事の問題、特に独り暮らしの孤食の弊害についてお話しさせて頂きましたが、今日は『骨粗しょう症』について私が知っていることをお話しさせて頂きます。

皆さんは、『骨粗しょう症』という病名を聞いたことがあるかと思いますが、骨の強度が低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気です。この主な原因は女性ホルモンのエストロゲンの欠乏と言われておりますが、その他にも加齢や運動不足も影響しているようです。

ですので、女性だけの病気ではありません。高齢者が大腿部などを骨折しますと寝たきりになってしまう恐れがありますので恐ろしい病気と言えます」

加藤さんは、骨粗しょう症の恐ろしさから入り、次に予防法について話した。予防法は、大きく食生活と運動の二つに分けて分かり易く話してくれた。

食生活では、カルシウムの多い乳製品やそのまま食べられる小魚などと共に、良質のたんぱく質を摂ることの重要性を語り、タバコやアルコールなどのカルシウムの吸収を悪くする物の取り過ぎについて注意を促した。

また、運動については、適度の運動が骨に刺激を与えて新陳代謝を活発にすることにより骨を丈夫にすること等、静かな話し方ではあったけれど説得力があった。

私たちは、加藤さんからたくさんの事を学ぶことが出来る。なんと有難く幸せな事だろう。「なのはな会」に加藤さんを誘ってくれた大川さんにも感謝したい。その大川さんは、今回は黒子役となって、準備に忙しく立ち動いている。

今回も大成功だった。「じゃがいもとスナップえんどうの牛肉炒め」も「トマトしそサラダ」も美味しかった。全員、胃も心も満足しながらお茶を啜った。その時、女性のSさんが、加藤さんに質問した。

「加藤さん、とっても美味しい料理でした。ありがとうございました。ひとつお聞きします。始める前に加藤さんがお話しされた『骨粗しょう症』は私もテレビで見て知っています。今日の献立は、その予防に効果はあったのでしょうか?」

大川さんは立ち上がり、質問した女性に向って話した。

「今日の献立は、『骨粗しょう症』を意識したものではありませんので、特にカルシウムが豊富な食事とは言えません。出来れば10時や3時のお茶の時間に、煮干しやチーズなどの乳製品を毎日少し食べる習慣をつけると良いと思います。煮干しは、5cm以下の小さめの物であれば、苦くなくて美味しいですよ。献立のたびに複数の病気のためと意識しますと疲れてしまいますから、一日の中で総合的に必要な栄養素が摂れるように心がけることが大切だと思います」

すると今度は「なのはな会」誕生の口火を切ったYさんが質問した。Yさんは、独り暮らしなので、とても健康には気を使っているようだ。

「カルシウムをたくさん摂ることと、その時に良質のたんぱく質も同時に摂ることの重要性は分かりましたが、適度の運動とはどういうことを言うのでしょう?」

加藤さんは、Yさんの顔を見ながら言った。

「私は医者でないので、余り自信を持って言えませんが、適度の運動は骨に刺激を与えて新陳代謝を活発にし、骨を丈夫にすると言われています。特に屋外での光を浴びた運動は体内でのビタミンDの合成を促進し骨の生成に役立ちます。

具体的には、朝、夕10分ぐらいずつ、早足歩きを日課にすると大変効果が上がると言われています。私、今回調べて初めて知ったのですが『高齢者のための季節の献立集』を作られた千葉県では、『なのはな体操』と言うオリジナルの体操にも力を入れています。体操は、全身の血行を良くし、肩こりや腰痛の予防も期待できます。

『なのはな会』も体の栄養の面から健康増進を図るのは良いことですが、それだけでなく、積極的な行動も必要だと思います。パソコン勉強会や「なのはな会」の始める前に『なのはな体操』をするとか、勉強会終了後に近くの公園まで皆で歩くとか、そういうことも取り入れたら、より効果が上がるのではと思います。ひいては健康な老後を送ることに繋がると思います」

今回の加藤さんの話しには熱が入っていた。自己顕示欲などの個人的感情は一切感じられなかった。加藤さんは現役当時も、患者さんの早期治癒を願い、栄養士の立場から精一杯支えてきたのだろうと私は推察した。

大川さんが、今日初めて皆の前で声を出した。

「私たちは、バランスの良い栄養の摂り方を学んで来ましたが、加藤さんのお話から、高齢者にとって運動もとても大切なことだと分かりました。高齢者の健康には、きっと車の両輪のようなものなのでしょう。

どうでしょうか?『なのはな体操』は次回のパソコン教室までに私が覚えてきますので、パソコン勉強会や『なのはな会』を始める前に、皆でやりませんか?腰が痛いとか膝が痛いとかの人は、座ってでも良いと思います。

それから、屋外での光を浴びた運動は骨を丈夫にする効果があるとのことですので、パソコン勉強会の時もなのはな会の時も、勉強会が終わってから、15~30分くらい歩きませんか?近くには公園や神社がありますので、時々場所を変えながらだと楽しいと思います」

私たちの仲間は、健康に対して貪欲だ。誰一人反対するものもなく、次回から行うことになった。

私も大川さんも常識をわきまえている。どんなに親しい間柄であろうと、会の雰囲気を壊してはならないことを知っている。                つづく

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