課題テーマに挑戦「鳥海山」第6回
2017年09月17日
課題テーマに挑戦「鳥海山」第6回
前回、「鳥海山」の物語を作り、それを作詞にするとお伝えし、物語の1回目をアップしました。今回は、2回目をアップします。まだ物語がどの位の長さになるものか見当がつきません。ですので、1回分ごとの長さはご覧になる方が疲れない程度と致したいと思います。では、さっそく記載致します。(本日の画像のタイトルは、「紅葉と鳥海山」です。)
鳥海山物語
第1章 (第2回目) 昭和41年3月
母は、また同じことを言いました。
「由美子、盗っていなければ、もう少し我慢しろ。だいじょうぶだ!」
また次の日も級友は、同じように囃し立てました。
「泥棒~由美子! 貧乏~由美子!」
由美子は、泣かずに唇をかんで耐えました。担任の先生は、「もし、間違えて持って帰ったのなら、返してやってね。」と特に由美子を庇うこともありませんでした。
それから数日して、隣の女の子が由美子に謝りました。家の机の引き出しの奥から、あのきれいな色をした消しゴムが出てきたとのことでした。
由美子の無実は晴れても、級友たちは誰も由美子に詫びたりしませんでした。ただ、村一番のお金持ちの家の総一郎だけは、由美子に頭を下げました。
「由美子、悪かった!疑ったりして、本当にごめんな!」
総一郎は、クラスでトップの成績で学級委員を務めて、女の子の憧れの的でした。
母はなぜこの日が来ることが分かったのか、この時には由美子は不思議でなりませんでした。
月日が経って、由美子が中学を卒業する3月になりました。由美子の家は貧乏なので、もちろん上の学校に進むことはずっと前から諦めていました。進路相談の頃には、担任の先生が何度か家にやってきて、母のふみ子に由美子の進学を勧めましたが、母と子は首を縦に振ることはありませんでした。村の小さな縫製工場で働くことに決めていたのです。先生がわざわざ訪問したのは、由美子の成績がとても良かったからです。
4月になって、あの総一郎から手紙が届きました。直接ではなかったけれど、総一郎と仲の良い近所に住む男の子が、「総一郎から頼まれた。」とだけ告げて、手紙を差しだしたのでした。鳥海山の頂きは、まだ真っ白い雪に覆われていました。
つづく