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創作の小部屋「独居老人のひとり言」第20回

2019年04月29日

 「独居老人のひとり言」第20回

ゴールデンウィークの真っ只中ですが、皆さんはどちらかの行楽地に向かわれたのでしょうか?私は家の裏に約80坪の畑があり、茄子やキューリ・トマト・スイカなどの野菜を植えるため、草取りをし耕しています。僅かな土地なので、耕運機もなく、昔ながらの万能鍬で耕しています。この仕事では、腕と腰と背中の筋肉を使います。久しぶりの力仕事に、昨夜から腰と背中に痛みがあり、今日は休養日と急遽変更しました。

昔、高校生の時、親から300坪(約1,000㎡)を1,000円で請け負ったことがあります。学校から帰ると万能鍬を持って田んぼに行き、1日2~3時間耕し、1週間で終わらせた覚えがあります。あの頃は、いくら動いても力仕事をしても、疲れというものを知りませんでした。若いということの素晴らしさを、老いてからでないと分からないのは残念なことです。(画像は鳥海山です)

  「独居老人のひとり言」第20回

19章 よみがえる恋心

私と大川さんはクーラーボックスを買うため、ある日近くのホームセンターで待ち合わせた。

私がホームセンターの駐車場に入り空いている場所を探していると、大川さんが走って来て空いている場所を教えてくれた。私は迷いなく駐車することができた。

「どうもすみません。ここの駐車場はいつも一杯で停めるのが大変で、お蔭で助かりました。」

私がお礼を言うと、大川さんは嬉しそうに微笑んだ。

クーラーボックスのサイズはいろいろあって、私にはどの位の大きさが良いか見当がつかなかった。私が下調べをしてこなかったのに気付いた大川さんは、キャスターの付いた48リットル用のクーラーブックスを指さして言った。

「小松さん、約10人分の食材を入れるとなると、キャンプに行く訳でありませんが、この大きさが必要だと思います。魚や肉などの常温では傷みやすい物だけといってもかなりの量になりますし、後から買い直すより少し大きいかなと思う位でちょうど良いと思います。それにキャスターも付いていますので、足腰に負担を掛けないで買い物が出来るので、きっと皆さんに喜んでいただけると思います。」

大川さんは流石だと感心してしまった。何の予備知識もなくやって来た私は、少し恥ずかしかった。このクーラーボックスの料金は約6千円だったが、金額的にも特に問題はないと思い私は賛成した。ホームセンターでの買い物を終え、クーラーボックスを抱えたまま、私は大川さんにお礼を言った。

「大川さん、どうも有り難うございました。私一人で来たら、きっと小さすぎる物を買ってしまったと思います。本当に助かりました。それでは来週また!」

私が車に向おうとしたその時、大川さんが後ろから声を掛けた。

「小松さん、もしお時間がありましたら、少しだけ私に付き合って頂けませんか?『なのはな会』の第1回目の献立の試作の食材を今から買いに行こうと思っているんです。」

もちろん私は喜んで承諾した。試作の献立は「高齢者のための季節の献立集」春の献立表2週目12日の夕飯だった。いつものスーパーに行くと、大川さんはバックから白い紙を取り出した。食材が詳細に書いてあった。試作をするということは、その食材の購入だけでも大変な負担を強いるとは考えてもみなかった。

私は大川さんのマイバスケットを乗せたカートを押して、紙を見ながら歩く大川さんの後を付いて回った。大川さんは食材をカートに入れると白い紙にチェックした。私の買い物は、売り場を良く理解していないので、同じ所を行ったり来たりを繰り返すが、大川さんの買い物は要領が良かった。

第1回目の「なのはな会」のメニューは、回鍋肉・たまねぎとニラの中華和えだった。私は回鍋肉という料理は初めて聞く料理名だった。多分大川さんはネットで調理法を調べ、食材をメモして来たのに違いない。そうでなければ白い紙にあれ程事細かに書かれている筈がないと思った。

私と大川さんが二人で買い物をしている時、パソコン仲間の一人と会ったが、「なのはな会」の試食用の食材を買い求めていることに、「ご苦労をお掛けします。」と感謝の言葉を残し、忙しいのでと草々に帰って行った。私と大川さんが二人でいても、また買い物をしていても、多分誰も不自然とは思わない。「なのはな会」の会長と講師役が会の活動をしていると思うに違いない。

妻が生きていた頃はよく二人で買い物に出かけ、いつも私が今日のように買い物籠を持って歩いた。私の好物の食べ物を籠に入れるとき、いつも妻は私の顔を見ながら微笑んだ。大川さんも、食材を籠に入れるたびに私に笑顔を向けた。

それにしても、妻以外の女性と二人だけで買い物をするのは、大川さんが初めてだった。妻の生存の頃を思い出し、妻と買い物をしているような錯覚に陥った。確かに大川さんは妻に雰囲気が、そして仕草までもが似ている。                  つづく

 

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