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課題テーマに挑戦「鳥海山」第8回

2017年09月18日

 課題テーマに挑戦「鳥海山」第8回

今回で課題テーマ「鳥海山」も第8回となりました。現在、「鳥海山物語」を書き進めていますが、ストーリーが決定している訳ではなく、キーボードを叩きながら物語を書き進めています。この方法ではいつ完成するか予想がつきません。

私は作詞の場合、必ずストーリーを先ず考えて、それからそのストーリーから思い浮かぶことばを出来るだけ多く書き出し、それからストーリーに沿ってことばを並べて行くという方法を勧めています。(ブログカテゴリー「それでは始めよう」を参照して下さい。)申し訳ないのですが、こと物語を書くときのスタンスはいつもこうなのです。

私の短編の物語はいつもその場の感性のままに進めています。ですので、脇道に逸れそうな時もあります。それでも物語を書くときはいつもそうなのです。

また脇道に逸れました。「鳥海山物語」の前回の続きをアップいたします。

 

   鳥海山物語

第1章(4回目) 昭和43年初秋

「私、とても総一郎さんとお付き合いは出来ない・・・。」

そう言って、由美子は急に涙を流しました。由美子の突然変わった態度に、総一郎は驚き、そして訳を尋ねました。

「どうしたの?由美ちゃん、なぜ泣いているの?」

由美子は、小さくしゃくり上げ泣いています。総一郎は、どうしたものかと思案しましたが、訳を聞かずにはおられませんでした。

「さっき、手紙が嬉しかったと言ったばかりじゃないか?」

由美子の顔を覗き込むように総一郎は、優しく聞きました。

しばらく泣いていた由美子でしたが、もう観念したかのように聞き取れない程の小さな声で、涙を拭きながら話し出しました。

「ごめんなさい。訳も言わず泣いたりして!私にはお父さんがいないし、とても貧乏だし・・お、お母さんが・・・総一郎さんとは・・付き合うなって!・・」

総一郎にもやっと由美子の涙の訳が理解できたのでした。

由美子の母は、富豪の家の長男の総一郎と父親のいない貧しい由美子が、将来結ばれることは決してあり得ないと信じているのである。当人同士が良くても、総一郎の親やその親戚の者が反対するに違いない。その時になって、由美子に辛い想いをさせるより、初めから諦めさせた方がどれ程由美子のためだろう。そう思っている。

総一郎にも、由美子の母の心が痛いほど分かりました。由美子の心を思うと、総一郎は由美子が不憫になり、また尚一層愛おしくなり、その小さな肩を抱きしめたい衝動に駆られました。

「由美ちゃん、もう泣かないで!大丈夫、僕がきっと守って見せる!」

由美子の瞳はますます潤み、由美子もまた総一郎の胸に飛び込みたい衝動に駆られていました。

二人は、また手をつなぎ境内を歩き始めました。由美子の表情は先程までとは打って変わり、杜の間からの木漏れ日に浮かんだ白いその横顔は、浴衣の花柄の絵よりもずっと美しく輝いていました。

畦道にはコスモスの花が咲き乱れ、遠く鳥海山は凛々しくそびえていました。

                                         つづく

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