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課題テーマに挑戦「鳥海山」第22回

2017年11月19日

 課題テーマに挑戦「鳥海山」第22回

今朝は朝から素晴らしい天気です。今日辺りは、筑波山には多くの観光客が訪れているものと思われます。

昨夜は遅くまで起きていましたので、起床は6時30分になりました。急いで昨日の続きを書き上げようとしています。こうして急いで書いた文章を、その後読み返してみると無駄な文章や、表現の曖昧な部分など、修正しなくてはならないところが随所に目立ちます。

この「鳥海山物語」も、「創作の小部屋」に完成後に移し替えますので、その時に推敲して修正したいと考えています。

  鳥海山物語

第4章(5回目)  昭和51年4月末

そろそろ桜の花の蕾みも膨らみ始め、もう直ぐ春本番が訪れようとしています。

伯父の縁談の話しが来てから、由美子と母ふみ子との会話が少なくなってきました。母は夕食のとき、いつも繰り返し同じ話をします。

「由美子、お見合いの件だけれど、人には相性というものがある。いくら周りが良いと思っても、当人同士の気持ちが合わなければ、どんなに条件が良くても幸せにはなれない。それは、私が今まで多くの人を見て来て感じたことだけれど、お前がお見合いをしてどうしても嫌なら断っても構わないから、一度だけ会ってみないか?」

由美子は返事をすることもなく、一筋の涙を流しながら俯くばかりでした。

由美子は、伯父が見合いの話を持ってきた翌日から、総一郎宛ての手紙を何度も出しましたが、返事は返って来ませんでした。しかし、由美子の総一郎への信頼は揺るぐことはありませんでした。

「総一郎さん、お元気ですか?私も元気に頑張っています。

何度もお手紙を差し上げたのですが、総一郎さんからのご返事がありませんので、私はとても心配しています。

私は、今本当に困っています。伯父からのお見合いの話しに母が乗り気なのです。

『総一郎さんのことを好いているのは知っているし、出来ることなら一緒にさせてあげたいが、所詮お前が佐々木家に嫁として入ることは、相手の両親も世間も決して許してはくれない。駆け落ちでもしたなら、尚更親不孝になる。どうか総一郎さんのことは諦めて、今度の見合いを受けてくれ!』

毎晩、こうして私にお見合いをするように話すのです。私は、母から受けた恩義には必ず報いるつもりではいますが、それとこれとは別な話です。私が一生を共にしたい方は、この世界の中で総一郎さんただ一人です。どうか、ご返事をください。大丈夫だ!もう少し待ってくれ!必ず迎えに行くと言ってください。その一言を聞けば、どんな辛いことも耐えられます。母の言葉に涙を流さずに、耐えることが出来ます。どうかお願いします。かしこ   由美子より」

殆ど同じ内容の手紙ですが、昼休みに郵便局まで自転車で行き、2日に1通の割で投函しています。そして、仕事が終わり家に帰ると真っ先に郵便受けに走ります。ですが、いつも空のままで由美子は落胆してしまいます。もう手紙の数は、20通を超えましたが返事は1通もありませんでした。

ある晩のことです。母が、初めて見る形相をし、由美子に声を張り上げました。

「由美子、私はお前のためを思って、見合いの話を毎晩しているけれど、お前は聞く耳を持たない。私にとってお前は自慢の娘だけれど、でももう待てない。どうしても見合いが嫌ならこの家から出て行け!総一郎さんの所でも、どこでも構わないから、見合いが嫌なら明日にも出て行け!」

母は、鬼のような形相でした。由美子は、あまりの母の姿に驚愕しました。出て行けと言われても、由美子には行くところがありません。総一郎からの返事もなく、東京へ逃げる訳にもいかないのです。

次の日の朝、由美子は母に観念したように言いました。

「私、お見合します。」

たったそれだけを言いました。その言葉に母は、静かに言いました。

「由美子、じゃあ秀夫伯父さんに頼んで、良い日を選んで先方と進めて貰うから。」

母の顔は、安堵したという表情でもなく、これで良かった、これが由美子のためなのだと、そう自分に言い聞かせているかのようでした。

お見合いの日は、5月半ばの大安の日に決まりました。由美子は、総一郎からの返事がないまま、更に手紙を出し続けました。

「総一郎さん、お元気ですか?私は、総一郎さんを疑ったことは一度もありませんが、私はついにお見合いをしなければならない状況になってしまいました。お見合いが嫌なら、家を出て行けと母は言うのです。私には行くところがありません。総一郎さんが、東京に出て来いと言うなら、私は喜んで今すぐ家を出るでしょう。でも何度お手紙を出しても返事を頂けないのですから、東京へ押しかける訳にもいきません。

総一郎さん、私はどうすれば良いのでしょう?もちろんお見合いをしてもお断りをするつもりです。母も、相性が一番だから、もし合わない人だと思うなら断っても構わないと言ってくれています。それでも、不安なのです。私は弱い女です。母を、伯父を捨ててまで、断れないかも知れないと不安なのです。

お願いです。総一郎さん、ご返事をください。私は仕事が終えて家に帰ると、毎日郵便受けに走ります。そしてため息をつきます。総一郎さん、どうか私を助けて下さい。私の人生には、総一郎さんしかいないのです。助けて下さい。お願いします。かしこ   由美子」

由美子が待ち望んだ手紙は、1週間が過ぎても、そして2週間も過ぎても届くことはありませんでした。                                                                        つづく

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