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課題テーマに挑戦「鳥海山」第5回

2017年09月16日

 課題に挑戦「鳥海山」第5回

前回は、散歩をしながら閃いたことばを1番から3番までを記しました。不思議なもので、いくら机上で考えても浮かばなかったものが、一旦忘れて自然の中に身を置いた時、ふと浮かびました。忘れないように、急いでメモ帳を取り出し書き出しました。

いま読み返しても、ストーリーの基本はこのイメージで良いかと思いました。ですが、何か工夫が欲しいと考えました。昨年の5月に「トッカリショの伝説」という物語を作り、それを歌詞にしたことが浮かびました。「よし、それで今回も行こう!」決心し、さっそくパソコンに向かいました。物語を作るのも基本的には作詞の作業と同じだと思いますが、私の場合は浮かんだことばを忘れないうちにと懸命にキーボードを叩きます。細かいことは、後から修正すれば良いことです。

前回の歌詞のストーリー通りではないかも知れませんが、取り敢えず書き終えた部分を載せてみます。まだ書き始めですので、この物語の長さやこの先の話の展開は未定です。ですが、多分基本を外さずに進められると思っています。

 

「鳥海山物語」

第1章 (第1回目) 昭和36年頃

昭和30年代のお話です。

鳥海山の麓に、暮らしの貧しい母と子が住んでいました。

母の名をふみ子と言いました。子供の名前は由美子です。

ふみ子の亭主は、娘の由美子が3歳の時に、急な病で亡くなりました。

幼い子との生活のため近くの工場の下働きをし、朝から晩まで埃だらけの姿でなりふり構わず働きました。幼い由美子が一人で過ごす時間も多くなりましたが、ふみ子は一緒のときは由美子に十分な愛情を注ぎました。

やがて由美子は小学生になりましたが、暮らし向きは変わりませんでした。

お世辞にもきれいな身なりとは言えない姿で、母が仕事で一人の時は、いつも庭に出て鳥海山を眺めていました。由美子の家からは、鳥海山が良く見えました。不思議なことに鳥海山を眺めていると、寂しさを感じなかったのです。

小学4年生の時でした。隣の席の女の子の消しゴムが無くなり、由美子が疑われたことがありました。その消しゴムは当時流行りのとてもきれいな色をした、級友の誰もが憧れていたものでした。由美子は言い訳もせずに、机に顔をうずめて泣いていました。

家に帰っても由美子は悔しくて泣きつづけました。心配したふみ子が訳を聞くと、やっと重い口を開いて訳を話しました。

「由美子、盗っていなければ泣くことはない。神様がちゃんと見ていて下さるから、安心して学校に行きな。だいじょうぶ!」

次の日、教室に入った由美子にたいし、級友たちは「泥棒~由美子! 貧乏~由美子!」とはやし立てました。今度は、由美子は泣きませんでした。母を信じていたからです。でも話し相手もなく、ひとり海苔の佃煮の弁当を食べ、ひとりで下校しました。

途中、田んぼ道の脇に大きな石があり、母が仕事で遅くなる時はいつもその石に座り、鳥海山を眺めて過ごすのでした。今日は、由美子は涙を流しながら、鳥海山に話しかけました。

「私、なにも悪いことなんかしていないのに、なんでみんな苛めるの!」

ここでは誰にも邪魔をされることはありません。由美子は涙に濡れた顔で鳥海山を見つめました。菜の花越しの鳥海山は雪で覆われ、幼い時に亡くなったので記憶は曖昧だけれど、その雄大な姿は父親のように由美子には映りました。暫らく泣いていると、「由美子、もう泣くな!由美子をいつも見ているよ!」鳥海山の優しい声が聞こえて来たように由美子は感じました。        つづく 

 

以上のように、今回は物語を作り、それから作詞に入るという手法で進めてみます。皆さんも、一度試してみて下さい。自分のオリジナルの物語を作り、それを歌詞にするという方法を。映画では当たり前のことかも知れませんが、私たちプロ作詞家でないものが、こうしたスケールの大きいチャレンジは楽しいものです。次回は、来週早々に続きアップたいと思います。皆さん、楽しみにしていて下さい。

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