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課題テーマ「仙石原すすき草原」第3回

2022年06月06日

 課題テーマ「仙石原すすき草原」第3回

【季節外れの仙石原ススキ草原】

今月の1日に仙石原すすき草原に行って来ました。今回の課題テーマがこの「仙石原すすき草原」だからです。

この草原の見頃は9月下旬から11月上旬ということは知っていましたが、雰囲気だけでも感じたいと思い出かけたのでした。「仙石原すすきの草原」に到着した私は、その入り口に立ち、周りを見渡しましたが人の姿は見当たりませんでした。季節外れのこの草原を訪れる人は誰もいなかったのです。

人ひとりいないこの草原を少し歩いた私は驚きました。草原は緑に覆われ、見上げれば青い空に白い雲。初夏の清々しく優しい風に、すすきが静かに揺れています。私は大きく深呼吸をしました。今、この広大な草原に、私ただ一人です。良いのでしょうか?この魅力の全てを私が独り占めです。

このすすき草原には片道約700メートルの歩道が設置されており、私は真っすぐ、そしてゆっくり歩いて行きました。途中、写真を撮ろうとした立ち止まった時です。ウグイスが鳴いているのに気付きました。

私はつくば市の郊外に住んでいますので、ウグイスの鳴き声は特に珍しくもありません。ですが、この草原でウグイスの鳴き声を聞けるとは思いませんでした。私は嬉しくなり携帯電話をビデオ録画に切り替え、ウグイスの鳴く方面に向けボタンを押しました。ウグイスの鳴き声と風の音を録音したかったのです。そうです。つくばにこの草原の雰囲気を持ち帰りたかったのです。ですが、残念ながらそのとたんに鳴き声が消え、私が諦めた頃にまた鳴き出しました。

仙石原すすき草原を十分に堪能した私は、それから「乙女峠」に向かいました。富士山の画像を撮ろうとしたのです。ですが、残念ながら雲に覆われ、富士山の雄姿を撮ることは出来ませんでした。

   仙石原すすき草原 第3回

作詞は物語です。このテーマ「仙石原すすき草原」の作詞を始めるあたり幾つかの物語が浮かびましたが、2つほど例を挙げてみます。

【物語その1 仙石原の女(ひと)】

私はつくばから箱根に、傷心を癒す旅に来たのであった。前の日に箱根神社で会った髪の長い若い女性と、6月のすすきがまだ幼い季節外れのこの草原で、また再会した。草原には他に観光客等の人の姿は見当たらなかった。すすきの若葉の香りのする歩道の折り返し地点に着いたころ、夕方から降る筈の雨が降ってきた。私は背中のバックから折りたたみ傘を取り出したが、十数メートル先を行く若い女性は雨具の用意をしてなかったようであった。

私は駆け寄って声をかけた。「雨が降って来ました。お洋服が濡れますから、バス停まででも私の傘にお入りになりませんか?」女性は迷っていたが「せっかくのご厚意ですので甘えさせていただきます」と私の傘に入ることに同意した。遊歩道からバス停まで歩く間に、彼女が人妻であり悩みを抱えて旅に来たことなどを知った。

バス停には着いたがバスの到着時間には暫らく待ち時間があった。「もう結構です」と彼女は微笑みながら遠慮したが、「私は平気ですよ」と言いながらバスが来るまで、彼女の方に傘を向けながら差し続けた。やがてバスが来て「有難うございました」と深くお辞儀をした彼女はバスの中に消えた。名前も知らない彼女とは僅か40分程の出会いから別れまでの時間を共有しただけである。たったそれだけなのに、私はつくばに帰ってからも、愛くるしくも寂しげな彼女の面影が脳裏から離れなかった。

あの日から1年が流れたが、まだ仙石原ススキ草原で出会った髪の長い人を忘れ去ることが出来ないでいた。もしかしてとの淡い期待を胸に、季節外れの誰もいないこのすすきの草原に、私はまた今年も来てしまった。

【物語その2 すすきに学ぶ】

こんな私に生きる意味などあるのだろうか?私は職場の人間関係に疲弊して先月の5月で会社を辞めた。独身の私はしばらくは失業保険と貯えで、何とか生きては行ける。傷心の私は逃げるように東京を離れ、ここ箱根にやって来たのであった。箱根は私の心をきっと癒してくれるに違いない。元気にしてくれるに違いない。そう思ってやって来た。

美術館や温泉地を回ってみたが、私の心は晴れなかった。前日は初夏の台風で大涌谷のホテルに閉じ込められた。しかし、今日は朝から台風一過で素晴らしい青空である。箱根に疎い私はどう過ごしたらよいかを迷った。ふとホテルのロビーに置かれた観光マップを何気なく開いた。「仙石原すすき草原」の画像が目に入った。だが、見頃は9月下旬から11月上旬とある。行っても仕方がなさそうであった。

だが、私を癒してくれると信じた美術館も温泉も、私に活力を与えてはくれなかった。私の心に明かりを灯してはくれなかった。前日は台風である。倒れたすすきの群生に何の魅力もある筈がない。見る価値などありはしない。なぎ倒されたすすきのその姿は、今の私の荒んだ心を映しているに違いない。他に特に行く当てのない私は、何の望みも持たぬまま、6月初旬の「仙石原すすき草原」に行ってみることにしたのである。

季節外れの、しかも台風翌日の草原に人影はなかった。私は「何も期待などはしていない」と呟いて、歩道を歩き始めた。数分歩いた頃、周りを見渡した私は驚嘆した。

すすきの群生の僅か1本ほども倒れてなどいなかった。辺り一面すすきの新緑に覆われ、青空に白い雲が浮かんでいる。爽やかなそよ風に若葉のすすきが揺れ、私の頬をも撫でて行く。遠くからはウグイスの声も聞こえる。私は感嘆せずにはいられなかった。

すすきの生命力、いやその生きざまに私は頭を垂れた。あの嵐に耐えたすすきは、それに立ち向かうのではなく、しっかりと地面の中の根で踏ん張り、自分の生き方を変えることなく、逆らわずに敢えて台風に身を委ねたに違いない。

私の生き方は、どうであっただろうか?上司に嫌味を言われる度にへそを曲げ、真剣に仕事に向かわなかった。気に入らない仕事には真摯に向き合わなかった。本心から力を入れなかった。

「ああ~ ここのすすき達の方が私よりずっと賢明だ。困難を避けることが出来ずとも、逃げることが出来ずとも、自分を曲げることなく素直な心で生きている!」

それからの私は変わった。運よく採用された会社で私は真面目に夢中で働いた。多くの仲間ができ、上司からも信用されるようになった。私は感謝せずにおられない。あの季節外れの「仙石原すすき草原」に出会えなかったら、今日の私はなかったからだ。

【次回の内容について】

二つの物語を披露させて頂きましたが、まだあるのです。どの物語を使うかはまだ決められないのですが、次回はブログカテゴリー「それでは始めよう」の中の『ことば集め』に入りたいと思います。物語が交差して、いろんな言葉が出てくるかと思いますが、それらを何とか一つに纏めながら作詞の完成に近づいていくつもりです。このことば集めは、ただ思い付いた言葉を評価することなく、一つでも多くを書き出していきます。その後それらのことばを1番から3番までに、作詞の主題に添いながら並べていきます。ですが、完成まではその時点ではまだ3合目くらいです。

この「仙石原すすき草原」を知らなかった私に、作詞の機会を与えて下さいました方に、恥ずかしくない作品となるよう頑張りたいと思っています。

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